2016年 10月 06日
本日診察にて外部寄生虫について考えた
患者さんからよくある質問「これってネコからうつったんですか?」 って。私は「ネコの耳ダニは犬にはうつりませんよ」って即答。確かに黒い耳垢。あとで思ったんだけど一応検査してあげてればもっと飼い主さんは安心したのではないだろうか?と。
当たり前のように答えはしたが本当にそうか。飼い主さんにはノミは人を噛むよね。昔は人にもノミが寄生していたよねって考えるんだろうな。ネコのノミが犬にうつるんです。これ常識。どうしてダニはうつらないの?
「ネコ 耳ダニ イヌ」でググってみたところ、耳ダニ情報わんさかあるよね。ヒト感染って噛ましてみるとまたまた出てくる。なんかしっかりしたサイトらしい。人にうつるって書いてあるなあ。動物病院でもあー書いちゃってる。ネコとイヌとで感染しあうって書いちゃ駄目っしょ。
これが全くもって大外れかといえばそうでもないからややこしい。私の認識が間違っているとしてもこれはもっとまずいと思ったので大学の寄生虫学の先生にメールにて質問してみた。
以下私のメール原文のまま、難しい専門的な言葉を含んでいるので興味のない方は飛ばしてください。
「外部寄生虫の話なのですが、ノミについては種特異性が低く、ネコノミが犬についたりウサギや人を含むほ乳類に寄生するという認識を持っています。
一方シラミハジラミについては種特異性が高く、ネコはネコ、犬は犬で他の動物にはあまりつかないという認識をもっています。毛質や角質が違うからそうなるのかなあと思っております。
ダニについては非常に種類が豊富でいろんな動きをする理解しがたい生き物だなと思っています。フタトゲチマダニなどは種特異性が低くいろんな動物に寄生していると思っています。
ニキビダニ(細かい種類があると思っています)については種特異性が高くネコのニキビダニに対しては濃厚な接触があっても基本は寄生するようなことはなく軽い皮膚炎で収まるんではないかという認識です。疥癬ダニ(ヒゼンダニ及びショウコウヒゼンダニ)も同様に考えています。
私が一番知りたいのはミミヒゼンダニです。基本、種特異性が高いと思っているのですがノミのように吸血するダニであることを考えると犬とネコで種差をこえて寄生することができるのか教えてください。私は特異性が高くネコのダニは犬に寄生しないと思っておりますがホームページなどを見ると人にもうつるんです。みたいなことを書いているサイトを散見します。犬猫ヒトが一緒に生活していれば濃厚な接触が考えられますが、ヒトにミミダニが感染したということはほとんど聞いたことはありません。最近は犬とネコが濃厚に接触している家庭もありますので果たして実際のところどうなのか教えていただきたくメールしたものです。」
ようするにシラミハジラミ、ニキビダニ、疥癬、耳ダニ(ミミヒゼンダニ)は犬猫ヒトを含め感染しあって症状が出ますか?私はしないと思うけどって感じ。
そして先生の回答原文のまま
「「ミミヒゼンダニが種差をこえて寄生することができるのか」というご質問であろうと存じます。大量に寄生した症例では、畜主に物理的な付着(短期的な寄生)が起きるかも知れませんが、恒久的な寄生はあまりないと思います。」
ようするに耳ダニに濃厚な接触があった場合は一時的な症状が出るかもだけどずっとしっかり寄生するわけではないのでそんなに大きな症状は出ないよってこと。「あまりない」ってのがミソだなあ。基本ないということでしょう。
シラミハジラミ、ニキビダニ、疥癬について念押ししたんだけどスルーでしたが耳ダニと同じ考えでいいと思います。ノミについてはいろんなほ乳類に感染し合うのでお間違いなく。
ノミ、耳ダニとも吸血して栄養を得ている虫だけど全然性格が違うんだねーー面白いと思いませんか??